自分のベストを尽くす
「他の人より優れた人間になろうなんて思わなくていい。ただ、自分のベストを尽くしなさい。お前は誰かより秀でているかもしれないし、他者がお前より優秀なこともある。常に全力を尽くしていれば、そういったことを受け入れられるものだ。でも、努力を怠った人間にそれは出来ない」。
アメリカ大学バスケットボール界の名将、ジョン・ウッデンが幼い頃、父親から受けた助言である。1948年から1975年までUCLAで指揮を執り、同校を10度全米チャンピオンに導いた。今日、UCLAのキャンパス内にはウッデンの銅像が建っている。無論、功績を讃える意味でだ。
父から子に受け継がれた教えは、大学スポーツ界の最前線で生かされた。ウッデンにとって、己を信じることは人間としての品格を意味した。どんな状況に置かれてもベンチから立ち上がって大声を出すようなことはなく、冷静にゲームを見詰めた。
「勝利は喜びであり、敗北は失望に違いないが、バスケットボールは人生の1ページに過ぎず、それが全てではない」と、預かった選手一人一人に言い聞かせた。
NBAチームからスカウトされるような選手にも学問の重要性を説き、授業を疎かにするなと繰り返した。また、「成功とは心の平安であり、最高の自分になるために最善を尽くしたという満足感が齎す結果だ」と努力の尊さを若者に伝えた。
2010年6月4日、ウッデンは99歳で天に召されたが、その哲学はUCLAやバスケットボール界に脈々と受け継がれている。
さて、弊社の専務、森田朗もこの程ウッデンの哲学に触れた。
森田は話す。
「ウッデン氏の語ったことは、凄くよく分かります。ただ、我々は実践して利益を得なければなりません。世の中はウッデン氏のような立派な人間ばかりじゃない。自分も理想を追い求めたいけれど、とてもそこまでは行けません。現実は厳しいですよ。だから、部下には自分のやっていることしか見せられません。
人を育てる時、まずは放っておきます。自発的に質問する、あるいは行動を起こすような状況を作るのです。手取り足取り教えると、人間ってそれしかやらなくなってしまいますから。能動的に仕事に向かわないと、身に付かないんですね。最初は私と2人で営業に行きますが、数年後には自分で獲得したお客様しか残らないものです。
それから、誰からも好かれる人間であることが重要なので、社会的マナーや立ち居振る舞いを指導することもありますね」
森田は結んだ。
「若手の頃から社長に言われ続けたのは、『一芸に秀でなくていい。能力があるか無いかよりもキャパシティの広さが勝負だ』ということです。それに関しては、ベストを尽くしてきましたよ」
JBCは、それぞれの社員が全力の注ぎ方を考え、仕事に向かっています。
林 壮一 ジェイビーシー(株)広報部 / ノンフィクション作家
