向日葵
2メートルを超える向日葵が太陽に向かって伸びている。十数の花が、それぞれ日光を浴びて咲く。たとえ開花時間が2週間に満たないとしても、強い生命力を感じる。
広島、長崎に原爆が落とされた直後、核爆弾開発を司ったアメリカ人科学者は「75年は草木も生えないだろう」と発言した。だが、あの日からおよそ1カ月後、少しずつ新芽が顔を出し、“生”を伝えた。
我々、JBCスタッフ3名は、広島に原爆が投下されてから80年となった日の2日後、植物の逞しさを目に留めながら、横須賀市内にある武山支援学校へ向かった。この秋、同校の中学生とサッカーを通じた交流イベントを開催する。プロの世界で活躍した、あるいはプロを目指して自らの生命を燃焼させた元選手の力を借り、障がいをお持ちの少年少女と触れ合う。
「子供たちを笑顔にしようーーーー。ウクライナやガザでは戦火が収まらないが、今日、日本で平穏に過ごせていることに感謝し、少しでも地域に貢献できることを探そう。出来ることを精一杯やろう。」
それが、イベントの趣旨である。社としては2度目、武山支援学校では初の開催となる。
担当の先生方と当日のスケジュールや実行メニューを話し合いながら、平和の尊さを実感する。また、次世代に何を伝えていくべきかを改めて考えた。現時点では、54名の生徒さんが参加予定だ。
当日の会場となる武山支援学校の体育館は、静寂に包まれていた。窓から差し込む夏の日差しが、床を照らす。この日は気温が36度に達する暑さだったが、数カ月後に体育館でお子さんたちを笑顔にしてみせるぞ、とJBCスタッフは頷き合った。
「昨年12月のイベントは、とても盛り上がりましたね。僕はずっと、早く次がやりたいと思っていました。今度は横須賀ですか。子供達との触れ合いを楽しみにしていますよ。前回は<サンタクロースになりに行く>がテーマでしたが、今年はちょっと時期が早いのかな。でも、絶対に喜びをお届けしたいです」
元アルゼンチン・ユース代表のセルヒオ・エスクデロは、決まっていた仕事をキャンセルして当日を迎える。
秋、向日葵は枯れている。が、あの強靭さに負けないように、JBCはイベント開始のホイッスルに向かう。
林 壮一 ジェイビーシー(株)広報部 / ノンフィクション作家
