ハロウィンを控えて | 電子部品・半導体 | 株式会社JBC

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ハロウィンを控えて

 何年前の出来事だったが定かではないが、都内を歩いていた折、自転車の後部座席に幼児を積んだ女性が私の横をすり抜けた。坂道だった。

 「ママ、頑張れ!」「ママ、頑張れ!」と声を出しながら、彼女は必死にペダルを踏んでいた。そう、「漕ぐ」よりも、「踏む」という表現が適切だ。このママはそうしながら、坂道を上っていた。

 私を追い抜く瞬間、娘に向かって、彼女は「ねえ、応援して」と言った。そしてまた、「ママ、頑張れ!」と前進していった。

 

 

 どこからか金木犀の香りが漂っていた。このお母さんは、きっと愛情たっぷりに娘さんを育てているのだろうなと、温かい気持ちになった。一瞬のことだったので、正確に見てはいないが、買い物カゴに乗せられたバッグから、カボチャが覗いていたような記憶がある。

 「金木犀」と「カボチャ」から判断するに、今の季節であったに違いない。今日、あの親子はハロウィンを控え、幸せな日々を送っているであろう。娘さんは、自分で補助輪無しの自転車を漕いでいるのではないか。

 あのお母さんは全力で娘の世話を焼き、子供が笑顔となる言葉を投げかけていることだろう。ハロウィンのカボチャを前に彫刻刀やナイフの使い方を教え、自分たちの手で悪霊を追い払うジャック・オ・ランタンを作っているのでは…と連想する。

 古代ケルト人の風習に肖り、毎年、ハロウィンで飾られるようになったジャック・オ・ランタン。アメリカの家庭では、親子で必死になってカボチャの“作品”を創るのが一般的だ。とはいえ、私たちJBCは、こうした状況に置かれていない子供たちの存在も忘れない。

 

 坂道で目にした少女は、自分が子供を育てる身になっても、孫を抱く年齢になっても、きっと金木犀の香りを嗅ぐ度に母からの愛を思い出すだろう。その一方で、訳あって親の愛情を得られない子供もいるのである。

 

 「小さな行動でも出来ることから」。

 JBCは、子ども食堂に集う児童や、ウクライナ、ウガンダの子供たちが少しでもハロウィンを楽しめることを願って支援活動を続けている。笑顔で迎えられるハロウィンであってほしい。

 

 

林 壮一 ジェイビーシー(株)広報部 / ノンフィクション作家

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