一期一会 | 電子部品・半導体 | 株式会社JBC

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一期一会

 サンノゼ空港からサンディエゴまでのフライトは、ちょうど1時間。隣り合わせた51歳の中国人男性に話し掛けられた。

 サイバーセキュリティーの仕事に就いており、日本が好きだと言う。

「ロッポンギだったかな? トーキョーで食べたピザの味が忘れられないんです。また、行きたい」

 彼は11歳で母国からアメリカ合衆国に移り住んだ。初居住地はイリノイ州シカゴである。シカゴのピザは、分厚い生地にチーズがふんだんに詰められている。他の地域には無いパンチの効いた食感が魅力だ。

 「でも、私にとってはトーキョーのピザこそ、最高なんですよ」

 彼は微笑みながら語った。

 「アメリカの小学校に通ったんですね。道理で英語が上手なわけだ」

 そう伝えると、「あなただって十分聞き取りやすい英語ですよ」と反応してくれたが、お世辞であることは百も承知だ。私がこの国に住み始めたのは27歳の時である。いまだに「R」「L」の発音がダメで、聞き間違えられては凹む。

 

 

 

 彼の長男はニューヨークの大学院で生物学を専攻し、次男は間も無くミシガン湖沿いのエバンストンに建つ名門、Northwestern Universityの新入生となる。互いに2人の子供を持ち、その年齢が近かったこともあって、会話が弾んだ。アメリカ合衆国で黄色い肌の我々が生きていくには、学こそが武器になる、という見解も一致した。

 

 「あなたは今回、サンディエゴで何をなさるのですか?」

 「引っ越しです。4年間暮らしましたが、今後はLAを拠点とします。倉庫に荷物を預けてあり、これからトラックを借りて運ぶのです」

 「それは大変ですね。運転、お気を付けて」

 「はい。もしまた会う機会があったら、東京でピザでも」

 そう言って笑顔で別れてから数時間後、彼からメールが届いた。渡した名刺に記したアドレスに送ってきたのだ。

 

 

 2014年の初夏、イタリア・ミラノを訪れた折にもコペンハーゲンからのフライトで隣に座った男性と友人になった。ミラノはサッカーの取材だったが、件の男性のお陰で当地を代表する新聞『La Gazzetta dello Sport』と繋がることができた。

 

 思いがけない出会いが、時にかけがえのないものとなる。一期一会の精神を大事にしたい。JBCはこの夏より、LAでもスタートを切る。

 

 

林 壮一 ジェイビーシー(株)広報部 / ノンフィクション作家 

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